大森浜をぶらぶらと歩く。
と思ったら寒い。冬の浜歩き特有の、耳の中から寒さが染みる頭痛がしてくる。
ああ冬になったんだなぁ。
いつもは散歩のひとがちらほらといる浜だけど、さすがにそんな人もいない。
今日は雪が積もってしまっている。そのうちに溶けるか波に洗われて、陶片なんが拾える日もあるだろうとな、と思うまもなく背後からおばあさんに声をかけられた。
かいつまんで言うと、77歳のその方は、50過ぎの娘さんと同居しておられ、文句を言われつつも浜歩きを日課にしつつキレイだったり珍しかったりする貝を部屋いっぱいに収集しているんだそうだ。貝の名前や種類についてはとんと分からないけれど。形や色がおもしろいなと思う。死んだら捨てる、と言われている。どんなに寒い日でも長年浜歩きを続けていて、ちょうど
啄木小公園を折り返しポイントにしている。で、ちょっとしたココロのもんやりを啄木氏にぽそっとつぶやいたりする日もあるとのことだ。
いままでこの浜で、変わったものが打ち上げられたりしたことはありますか?
何故かとんでもなく大きい流木が流れ着いたことがあるとのことだった。
・・・ご本人も言っていたけれど、こうした話を3回4回と繰り返す。しかし頭はこうでも、体はぴんぴんしている・・・とも。
このおばあさんとは別に、実はこの浜で少し変わったおばさんをたまに見かけることがある。
腹から出したような声でカモメを呼んでいるところをちらりと何度か見た。
うぐぉぉぉ~
この日、浜に下りる前に、ちらっとそのおばさんを見たような気がした。ジャンパーの色で分かるのだ。さらに、その何かそら怖ろしい感じの声も。
おばさんがいたと思しき啄木公園近くの浜には、上の写真のとおり、雪面になにやら文字が書いてある。
至近距離から見てもワタシ的には?であるが、浜から少し離れて堤に上がると分かった。
大間原発大まぢか
確かに、建設中の大間原発は、津軽海峡を挟んだ対岸の下北半島のほぼ突端に位置し、函館から20キロも離れていない。しかし、海を挟んでいるため、函館はその建設計画になんら公式には関係してこなかった。砂浜雪面文字が韻を踏んでいるように、原発とは大間近だけど蚊帳の外であることは確かで、これが陸上だったら、原発関係の近隣自治体としての関与があっただろう。
断定はできないけれど、砂浜雪面文字を書いたおばさん。それと最初のおばあさん。
大森浜は町に隣接しているだけに、波や風とともに、なにか人の意識のようなものも交錯している。